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志賀 勝
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月と季節の暦
昇り来る柿色の乱れ月
伊藤 寛

ある夜、ふと東の空を見下ろすと、不思議な光景にであった。思わず「こんな月見たことないぞう。」と心の中で叫んでしまい、全身が震えた。

私と月との出会い・・・それは今から30年以上も前になります。私を魅力的な宇宙へと導いてくれた唯一の物体です。それ以来私は宇宙の魅力に取りつかれ、いわゆる天文マニアとして星星と親しんできました。望遠鏡やカメラを使用し、もっぱら物理的な視点から月と親しんできましたが、一昨年月暦にであい、それ以来日常生活的視点から月と親しむようになりました。

仕事柄月の出を見下ろすような場所で仕事をしています。ビルの屋上?山の頂上?いいえ、もっともっと高いところです。地球で一番高いところ、そうです旅客機の操縦をするパイロットです。

21時45分、千歳発東京行き最終便。巡航に移り飛行状態は万事順調。お天気は快晴。上を見ると正に宝石を散りばめたような星空。下を見ると、これまた同じく宝石を散りばめたような街明かり。仙台上空、高度35000ft(約11000m上空)。上を見ても下を見ても色とりどりの宝石だらけ・・・「仙台か、このあたりに月の松島があるんだよな。」、なにげなく東の空を見ると、遥か彼方暗い水平線の更に向こうに、線香花火の火玉のように赤く鈍い一点の光。漁火にしては赤すぎるし暗すぎる。様子を見ているとその光の点は、形を変えながら徐々に大きくなっている。一点の光から面積をもった光斑に、そして形をもつようになってきた。「何だろう」まだ分からない。その形はやがて熟しすぎた柿のような色になり表面に斑をもった。「あっ、月だ」。この時初めて気がついた。

徐々に全貌をあらわすに従って更に驚いた。間違いなく月だと思うが自信がない。月暦で言えば二十二日月の頃。満月を過ぎ新月へと欠けていく途中の、ちょっと太目の半月だと思うが。水面にゆらゆらと映る月のように輪郭が波打っていて、全体は潰れ気味で常識的な月の形をしていない。色も鉄が溶けるような鈍い柿色。でも暖かみは感じない。

この間時間にして1〜2分。興奮さめやらぬ状態で我に返ると、なんとその月は水平より下方からゆっくりと昇る。いいや、昇るでもない、昇って行くでもない、正に昇って来るだ。鈍い柿色、波打つ形、そして昇って来る。そんな月を見たのは初めてであり、あれほど興奮したのも初めてだった。それまで一つの天体として物理的に月を観ていたが、日常生活の中で月を心や身体で感じたいと思い始めた時期だったのだろう。今は月をより身近に感じたいため月暦を読んでいる。

皆さんもこんな月の出を、飛行機から見てみませんか。月暦で二十二日か二十三日(月暦に月の出の時刻が書いてあります。月の出時刻22時30分頃が良いでしょう)。狙いは千歳発東京行き最終便。座席はもちろん左の窓側です。くれぐれも右の窓側にはお座りになりませんように。

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