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月と季節の暦
月の名所十二選余話
第一話 修験道と月
(山形県月山)

「月と季節の暦」2011年版正月を飾るのは月山。「『死と再生』の山」のタイトルで芭蕉の句と森敦の小説『月山』を紹介した。芭蕉の句「雲の峯 幾つ崩(くづれ)て 月の山」は、「雲の峯」が夏の季語なので正月に入れるのはおかしいのだが、月の名所を北から順に取り上げたのでやむを得なかった。そもそもこの山は昔は(月暦の)六月、七月にしか登れないと言われていたほど、残雪や険しさで知られていて、芭蕉が先達に導かれて登ったのは六月六日。

月山八合目
月山本宮境内のウサギ
弥陀ヶ原湿原
月山八合目の登山道始点あたり。ウサギの石像は近年作られたものという。有名な弥陀ヶ原湿原も見られる
現在の私たちは、八合目まで車が通じているのでその地点から3時間ばかりかけて頂上目指せばいいのだが、なだらかな山容のこの山を麓から登っていかなければならなかった芭蕉の時代には、気が遠くなるような難行、苦行として感じられたのではないだろうか。当然、山中で一泊しなければならない登山だった。

芭蕉は羽黒山を経由して月山に登っている。羽黒山で詠んだ「涼しさや ほの三日月の 羽黒山」も、「月の俳人」らしい面目が躍っている。月に導かれ、寄り添うように月とともにあった芭蕉の軌跡は、もう一人の「月の歌人」、西行の軌跡とともに、いつも私の脳裏に固着していて不思議である。

月山登山のルートは羽黒山から入るものや湯殿山からのものなど七つばかりのルートがあったという。羽黒修験が切り開いたルートだろうが、羽黒修験は白山修験と関係があるのではという指摘もあるようだ。白山もまた「死と再生」を信仰の要としている。山岳宗教とはそういうものである。そして、月もまた「死と再生」を繰り返し、人間によみがえりの観念を教えるものである。その意味で、死んではよみがえる月を冠した月山は私たち現代人に残された大変貴重な財産なのである。

登山は楽しみ。月山登山は、その楽しみにも増して、下山のときはよみがえりの爽快感をもたらしてくれる聖なる山。

(辛卯 月暦正月四日=2011年2月6日記)
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