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月と季節の農業

第六回 文・鈴木 正人

作物が生長するのに欠かせない光を供給してくれるのは太陽。だが、地球の表面に加わる月の引力は海水を満ち引きさせたり、作物や、あらゆるその他の生きものの生理に影響しているとしても不思議はありません。月のリズムは、作物の体内生理に働いています。

私はお茶栽培をしていますが、大潮を目安にお茶の防除をしています。害虫の発生に対して無駄をなくして確実な防除をするためどうしたら良いか? 虫がいつ発生するか分かれば本当に無駄がなくなると思い、それから20年以上観察が続いています。観察を始めて10年が過ぎた頃、必ず共通していたことが、満月や新月の大潮の時期に虫の発生がピークに来ていました。大潮は三日〜四日ありますが、虫の発生が八割以上の時期で一番最後の日に防除すると無駄がないのです。しかし、天候も左右するので雨降りに防除する人はいません。大潮の最後の日が雨の場合は、前倒しして防除します。

全体的に言うと、新月の大潮より満月の大潮の時の方が7対3ぐらいで虫の発生が多いように感じています。これは二十年目ぐらいに分かったことです。

また、樹勢を上げたり、生長を促進するための液肥等の葉面散布ですが、私はお茶の栽培をしていて早く確実な生葉を収穫したいので、これについての観察も一緒にやってきました。肥料は根から吸収するものだと思っていましたが、葉からの吸収もかなりのものだということが分かってきました。葉面散布もどの時期にかけたら良いのか? 特に、窒素を主体としたものをかけるには、大潮が一番だということも分かりました。葉の気孔の開き具合も大潮のときが一番大きく開いているようです。全部の畑の葉を調べたわけではないので100パーセントとは言えないかもしれませんが、吸収がよく確実な結果が出てきます。私のように、葉を収穫する者は、短期間に効き、顕著にその効果が現われてくれる方が良いのです。実を収穫する人は大潮に葉面散布するのは危険かもしれません。私の推測ですが、実の収穫の人は大潮の五日〜六日前ぐらいが適期ではないかと思います。それでは、窒素重視の液肥と海草等のミネラル分が多いものや、カリ等を重視した液肥では、新月、満月のどちらの方が良いかというと、満月が窒素主体のもの、新月はミネラル分が多いものが主体のもの、という気がしています。両方を兼ね備えたものなら、どちらでも使えるかもしれません。

収穫ですが、満月の前後のものと新月の前後のものとでは、味が違うように思っています。前年の一番茶後から来年はもっと美味しいお茶を収穫しようと手をしっかり加えてきても、新月前後に収穫してしまうとさっぱりしたお茶になってしまうように感じますが、それほどしっかり手を加えてなくても満月の前後に収穫したお茶は味が濃いように感じます。まだ科学的な検査をしたわけではないのではっきり言えませんが、樹木は上弦の月のとき地上部のデンプン量が高くなり、下弦の月の時にはデンプン量が下がるという実験データは出ているようです。地上部でのデンプン量のピークは満月、一番少ないのは新月、ということになります。デンプン量が旨味と比例するか分かりませんが、味を追求していくと、下弦の月の収穫より上弦の月の収穫の方が口の中にインパクトがあるお茶になると思います。

鈴木正人  〒437-1611
静岡県御前崎市新野2943
TEL・FAX 0537-86-4827

(更新日:2013.4.11)


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