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志賀 勝
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月と季節の暦
志賀勝から一言
(2007年11月3日)

最高の十三夜

深大寺の十三夜月
東京・深大寺から(後出の記事参照)
雨月や無月の多い仲秋の名月は今年は全国的に見られ珍しい年でしたが、「後の月」である十三夜も好天に恵まれ名月が二回とも観賞できました。記憶をさかのぼっても、このような年は思い出せません。

〈月〉の会・東京のメンバーは恒例の「深大寺十三夜」に多数参加しましたが、先日〈月〉の会・西尾が結成されたばかりの西尾市でも盛大な催しが行われたとのこと。まずはその報告から。

秋分の日の9月23日に西尾市で「月酔 in 西尾」というタイトルの催しが開かれました。仲秋名月直前の八月十三夜の日でもありましたが、夜の部の月見は旧近衛邸尚古荘で行われ、二胡演奏家の王侃(ワン・カン)さんが庭園で馬のように軽快なモンゴル風音楽をものする中、流れる雲の中から月が現われては消え、また現われるといった野趣に富んだ月見の夜となりました。

月見前の講演でわたしは話しましたが、急遽編集したビデオ「月を文化に」(わたしが関わってきた静岡県、中京圏の月の行事を15分にまとめたもの。会員の穂盛文子さん制作)を皆さんに見ていただき、わたしの話の前に〈月〉の会・西尾の代表になられた佐久間桂祥さんのお話がありその話は佐久間さんご自身が体験された「月見ドロボー」の風習についてのものだったので、わたしの話もこの「人類史的」ともいえる重大な風習に触れながらの話になりました。

ハープ演奏と語り 「名残の月の夕べ」
西尾・月を楽しむ会の十三夜イベント(妙喜寺にて)

佐久間さんは妙喜寺(曹洞宗)のご住職で、「全国ホタル研究会」の事務局長もなさっています。その妙喜寺で九月十三夜の催しが開かれたとのこと。会結成から間をおかずの催しですから、熱意のほどがうかがわれます。会の運営に携わっている鈴木俊貴さんから素敵な写真がたくさん届きました。ハープの演奏、餅つきなど、よく練られた企画で素晴らしい催しになったとのこと。今後もっともっとたくさんの子どもに月の催しを体験してほしいという希望を鈴木さんは語っていて、教えられました。

餅をつく佐久間さん
代表の佐久間さん自ら餅つきを
佐久間さんに十三夜の催しについてレポートをお願いしました。どうぞご一読ください。(西尾市の〈月〉の会は「西尾・月を楽しむ会」の名称ですが、名古屋で〈月〉の会がたまたま「名古屋・月を楽しむ会」を名乗って作られたため、それを踏襲した形です。西尾や名古屋では皆さん〈月〉の会と普通言っています。名称には拘泥していません)。

西尾・月を楽しむ会代表 佐久間 桂祥
子供の頃から、月のきれいな夜は、暑くとも寒くとも父親の側に座って、空を眺めた記憶は60年たっても褪せる事が無い。

月を眺めると何か心の底からこみ上げるものがある、父親譲りの月を好む生来の血かもしれない。

今年の中秋の名月は、街中で松の合間に見え隠れする月を眺めた。

名残の月は、寺の境内に特設の舞台を作り、80名余の月を楽しむ人たちとの月の宴を開催した。

ハープの演奏と語りが月明かりの中流れ、月の中のウサギにあやかり餅を搗き、豆名月に欠くことの出来ない枝豆も用意し、杯に月を浮かべた。

西尾市の催しに続き、11月24日の満月(月暦十月十五夜)には名古屋市で催し「十五夜物語」が開かれます。チラシスケジュール欄をそれぞれクリックしてご覧ください。

深大寺の十三夜で講演する志賀
東京「深大寺十三夜」で講演する志賀(撮影:穂盛文子さん=冒頭・下写真も)

一方、深大寺の十三夜は九回目を数えましたが、雲ひとつない月夜のもと、深大寺の十五名もの僧侶による「天台声明」、そして能楽もいつもの松田弘之さん(能管)、岩佐鶴丈さん(薩摩琵琶)に、シテ方の山中さん、川口さん(ともに観世流)が加わった「壇ノ浦」や「屋島」など月が登場する演目の妙。最高の一夜で、これまで九回の催しの中で一番記憶される十三夜になったかもしれません。そして次回は十回目を迎えます。

鳥井美知子さんの二句 月清こと鳥井美知子さん直筆の
「深大寺十三夜」を詠んだ二句。
「平家」はこの日の演目に
ちなんで。上記記事を参照

「月と季節の暦」2008年版の読み物特集は「月時計」

深大寺でのわたしの「月の講話」では10月に報道があった生物時計をめぐる大きな研究を引用しました。2008年版の暦では、「月時計」と題して生物時計(体内時計)の問題を特集しています。単細胞生物から人間までに見られる月のリズムをまとめた特集ですが、生物の生存に月が深く関わっている、不思議な、しかし科学的に立証された読み物が十二ヶ月を飾っています。

その特集ではサンゴも取り上げていますが、サンゴの産卵は従来は新月、満月のときと報じられてきて、それが信じられてきました。しかし下弦の月ごろに産卵する種類も知られるようになって最近は混乱が生じてきていました。特集「月時計」ではサンゴ研究家の目崎拓真さんにその辺の混乱を整理していただき、満月に産卵するグレートバリアリーフ(オーストラリア)についても触れていますが、そのグレートバリアリーフでのサンゴ産卵の仕組みをオーストラリアの研究者が月の光との関係で解明した、というのがその報道でした。

月光をキャッチするサンゴの遺伝子はわたしたち人間も共通に持つもので、それが解明された意義は測り知れません。10月にはまた、夜間に強い光を浴びると生物時計が狂うという研究も報道されました。生物時計(体内時計)をめぐる二つのビッグニュースは、月の存在がわたしたちの生存にとって基本的条件であることを示し、私たちのライフスタイルの今日的あり方を再考させる一里塚になることでしょう。わたしたちの環境に危機をもたらした悪しき「科学」が横行する中で、このような研究は大歓迎、暦の特集「月時計」を今回試みた意義は大きかったと確認した次第です。

こちらをクリックして2008年版月暦の宣伝チラシをご覧ください)

その他、お知らせ

既報の「リビングデザインセンター OZONE」(東京・新宿)が呼びかけた「月的生活デザインの会」は10月25日に初会合が行われ、会の活動が始動しました。参考までOZONEの呼びかけ文を掲載します(こちらをクリック)。

〈月〉の会・深谷で11月17日に計画している自然農家訪問の会の案内が届きました。こちらをクリックしてどうぞ案内をご覧ください(了)。


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