月夜野・玉泉寺の名前は、「十三夜」という月をこよなく愛してきた日本列島の人々の営みを復活させた場所として全国に鳴り響いています。
この百年間、かつては家庭で、地域で、お月様は機会あるごとにごく当たり前に祝われていたものでした。この貴重な風習は途絶え、月の文化と言ってもいい伝統はいわば根絶やしの状態になっていました。だから玉泉寺が十三夜を復活させたことの重要さは、百万回繰り返し言っても言い過ぎではない、月の文化をよみがえらせる偉業でした。
先日、仙台で「月の秋・仙台」という催しを行ないました。350人もの人々が集まり、ちょうど一ヶ月前の十三夜の月と、折からの火星・月大接近の素晴らしい一夜を堪能しました。この仙台の催しは初めて開かれたものでした。月夜野における月の行事の精神をリレーしたものでした。仙台で集まった皆さんに、九月十三夜には月夜野でこれこれの月の催しがあると私は伝えました。
仲秋の名月を祝う行事は今日では全国的な行事になり、月のリズムで行なう伝統的な七夕も復活し始めました。来年にはさらに、さらに多くの月の催しを私たちは目にすることになるにちがいありません。
私たちを育む月の力に今や多くの人々が気づくようになっています。出産という赤ん坊の誕生から、農業や漁業、そして芸術活動に至るまで、月が太陽とともに人々に最も身近な自然であることに目覚めつつある、それが今日の状況と言えるのですから。
今日、長月十三夜の夜、現在までのところ全国に二つしかない十三夜の行事の一つである東京の深大寺における「十三夜観月会」で私は講演しています。月は古い、古い時代から、遠くに離れた人々をつないでくれる有難い存在でした。坂西良光ご住職をはじめ皆様のことを思いながら、深大寺で月の話をするつもりです。お招きいただいていたのに、深大寺の実行委員会の一員として今回は抜けることができず、皆様の前で直接お話できなかったことをお詫び致します。お月様に心からの感謝を捧げ、ともに月の夜を楽しみたいと思います。
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