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志賀 勝
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月と季節の暦
志賀勝から一言
(2012年10月8日 月暦八月二十三夜)

2013年版カレンダー表紙
(画像をクリックすると注文 
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2013年版月暦、11月中旬発売

「月と季節の暦」、「月暦手帳」の2013年版の制作が終わり、11月中旬に販売できる態勢が整いました。

「月と季節の暦」は、西暦2013年2月10日から2014年1月30日までを対象とする太陰太陽暦(月暦=旧暦)で、月のリズム、太陽のリズムのすべてのデータを網羅した暦です。同時に、編集面があり、毎回特集を組んで書籍のように親しんでいただく構成になっていますが、今回の読み物特集は、各界の方々に月に関するエッセイをつづっていただき、各月に掲載して「エッセイ特集 月めぐり」を組みました。

執筆者は――

金子兜太(俳人)、古在由秀(天文学者)、村山和臣(白山比め神社宮司)、小林公明(考古学者)、保坂敏子(俳人)、イルカ(シンガーソングライター)、佐伯一麦(作家)、ウォン・ウィンツァン(ピアニスト)、三田村有純(漆芸作家)、三浦茂久(古代史研究)、岡田芳朗(暦研究者)
の各氏で、それぞれの世界で名の通った方々ですが、毎月の暦と合わせご覧いただければ、月の見方、暦の見方がより一層ふくらみのあるものになっていただけるだろうと思います。

絵特集としては、「奇想月想」のタイトルで内外の絵画を紹介しました。月は、詩に歌われ、絵に描かれ、舞に舞われてきた想像力の源泉の一つ。毎回、月や季節の理解に資するため写真や絵を利用しているのですが、今回は月から想像力を得て奇想として表現された素材を紹介しました。月に関する解説に重点を置き、現実の月とどう違っているか、などの観点をご覧いただければ、月についても、絵画についても、より理解が進むことと思います。資料として利用した絵画は、小川芋銭、アンリ・ルソー、シャヴァンヌ、岡本帰一、ルネ・マグリット、曾我蕭白など。

このほか、「暦ことわざ俚諺集」も掲載し、月暦が育んできたことわざや生活の知恵の数々を通し、時間を「管理」するしか能のない西暦では思いもつかない月の文化や暦の文化の豊かさについて触れていただければ、と願う企画です。

前回のホームページ更新では、「月と季節の農業」の第三回目を「一言」欄とともに入れるつもりでしたが、原稿到着が遅れ、「月と季節の農業」は9月20日に単独で更新しています。山形県鶴岡市からのメッセージですが、筆者の蛸井弘さんは「黒川能」に携わる方でもあり(2005年の当ウェブサイトで紹介しています。こちらをクリック)、私も何度かこの伝統の催事に足を運び、深い感銘を受けました(蛸井弘さんの「月と季節の農業」を読むには、こちらをクリック)。伝統が生きている土地から発せられた「月の農業」のメッセージ、是非お読みください。

台風前夜のイベント、大盛況に


「仲秋待宵 月語り」で講演する志賀

会場は立錐の余地なく観客で
埋まった(画像はクリック
すると拡大します。以下同)

「仲秋待宵 月語り」のタイトルで行なわれた9月29日の催し(東京日暮里・本行寺)は、230名もの参加者のもと、盛大に挙行されました。私は、「月の女神がいた!」のタイトルで講演しましたが、私のレポートは日を改め、「竹取物語」の語りを見事に演じた坪井美香さん、そして催しのアレンジで奔走した〈月〉の会の谷崎信治さんと高橋葉子さん、観客でもありヴォランティアとして手伝ってもくれた岡崎みずきさんに一文をお願いしたので、どうぞご覧ください(このページ後半になります)。


黒田さんの紡いだ紬
三田村さんの漆芸作品

黒田妙美さん(〈月〉の会)が
この日のために紡いだ紬

三田村有清純さん(東京藝術大学)
の漆芸作品が舞台を飾った



しつらい風景

高橋久子さんほかによる、当日会場受付のしつらい風景



書を披露する鳥井さん
談笑する3人

竹取の作者に扮し、書を披露する
鳥井月清さん(〈月〉の会)

向かって左から鳥居さん、
黒田さん、高橋久子さん

あの夜の「竹取物語」
坪井美香(俳優)
坪井美香さんの語り
『竹取物語』公演で、松田弘之
さん(能管)岩佐鶴丈さん
(薩摩琵琶)早川智子さん(筝)
設楽瞬山さん(尺八)の演奏
をバックに語る坪井さん


ここ数年、「竹取物語」が面白くてたまらない。今回の音楽家たちとは二度目の共演で、新たな発見もあり、物語が私たちの身体によりしみ込んで、作品に奥行きが出た気がしている。大まかな構成は決めているのだが、その場に、その一瞬だけに立ち現れる一期一会。琴が姫の清らかさ、美しさを描けば、琵琶と能管が嵐を呼び、尺八が剽けてみせる。書と紬も共演者だった。すでに覚えている言葉が、鳥井さんの書を見ながら語っていると、そこに込められた力を得て表現が変わることを楽しんだ。黒田さんの手でつむがれた天の羽衣の、しなやかで軽くて、しかもどこかに強さを秘めた手触りに導かれて、あの夜のかぐや姫は月に昇った……と、私は感じている。が、「語り」は観客の想像力をどれだけ喚起することができるかが勝負。最大の共演者は、あの場にいらしたみなさまの想像力であり、物語を「見て」いただけたことを願うばかりです。

「月と季節の暦」十六周年を記念しての、「仲秋待宵 月語り」の催し、実に多くの〈月〉の会の仲間に助けられ、盛況のうちに無事終えられた事、翌日の台風の晩を避けられた事も含め、今となっては信じられない思いです。

多々ある準備不足、初経験での混乱を何とか乗り切れたのも、皆さまのご協力のお陰です。また本行寺の加茂ご住職様、加茂副ご住職様には、会場設営撤収を、陣頭指揮でご支援頂きました。

私の知り合いは、今回の催しを一つの和歌に例えて、感想を送ってくれました。志賀さんの講演は上の句で、天地を結ぶ月の女神の存在を歴史と記憶から甦らせ、鳥井さんの書の実演で、「竹取物語」の時空を立ち上げ、下の句の「竹取物語」の公演で、坪井さん、松田さん、岩佐さん、早川さん、設楽さんの気迫に充ちた語りと演奏が、遥か月の天空に私たちを誘い、二百三十人もの参加者を魅了しました。

加えて私には、三田村先生の漆と蒔絵の月のオブジェと、一月掛けて織り上げて頂いた黒田さんの紬は、それぞれの技法で、月の光を輝かせたり棚引かせたりして見えました。

高橋久子さんや柴田さんのしつらいも含めて、会場全体が「和歌」の様に響き合っていたと、知人の有り難く、嬉しい言葉を頂きました。

最後に、あの暑さと人混みの中、遠くは仙台市、南アルプス市、ひたちなか市、前橋市からもご来場頂いた方々に、厚く御礼申し上げます。ご参加、ご公演頂いた皆さまのご厚情を、次の〈月〉の会の活動に繋げていく様、務めて参ります。
谷崎信治

 29日の仲秋待宵 月語りの夕べは、予測を超えて、多くの方がいらして下さいました。観客も、出演者、演奏者の方がたも、楽しんでいてくれたことが、一番嬉しいことですが、皆さんいかがでしたでしょうか。窮屈な席、暑い中でも、皆さん一心に聞き入っている様子は、舞台の袖の方から見ることができました。

 待宵の月をしっかり観月もでき、翌日の仲秋名月当日が、嵐だったことを考えると奇跡としか思えないほどです。本当にお月様の応援もありました。

 月の女神の話は、私たちが子供の頃からそれとなく聞いていたのに、ただ見過ごしてきて深く読み解くことなど全く出来なかった私にとっては、新鮮でした。「羽衣」や「天女」 も、月の女神であり、日本の文化が月と共に育まれてきたことを改めて感じました。

 竹取物語は、原文でも、坪井さんの見事な語りや、能管、琵琶、琴、尺八の音で充分伝わりました。書や漆、紬の作品については、今回のみならず、またぜひ鑑賞の機会をもっていただけたらと思います。

 今回の催しの収益金の一部より、昨年来〈月〉の会メンバーが関わっている「チーム接骨院」へ支援金として送らせていただきます。このチーム接骨院は、震災一週間後から、石巻の渡波保育園避難所に毎週治療を続けている若いボランティアの集まりです。
高橋葉子

旧暦八月十五夜のお月様の晩に、「竹取物語」の会が催されました。墨をするささやかな音から始まり、筆の運びにゆったりとした古代の空気が感じられました。原文の語りによる声色調子と、琴、能管、尺八、琵琶がまざりあい、古典物語の世界が目の前で息づいているような新鮮さを感じました。優しい月の光を浴びたような紬と、鈍いきらめきをはなつ蒔絵。お月様先生である志賀先生は、古来の説話や万葉集、羽衣伝説、トヨウケヒメ伝承などから月の女神がいたことを話してくださいました。特に「羽衣」にでてくる黒衣の天女が15人、白衣の天女が15人で月の満ち欠けをつかさどっているというお話は興味深く思いました。暦の神、豊穣の神であるお月様は女性の性と多産という面でも強いつながりがあるのですね。

本行寺境内から眺めた八月待宵月
帰り道に見上げたお月様がとてもきれいでした。このような素晴らしい会をつくりあげてくださった志賀先生、演奏者、作者の先生方、ご尽力してくださった会の皆様に感謝しています。ありがとうございました。
岡崎みずき


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