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月と季節の暦
志賀勝から一言(2004年9月4日)

「月の高野山」第一報 至福のとき

待ちに待った「月の高野山」が月暦七月十五日(お盆)=西暦8月30日開催されました。

前日の29日に東京圏からは<月>の会会員をはじめとする70数名がバスを利用して山に入り、天気が心配ないち日でしたが夕刻からは意外な好天、十四夜の待宵の月をみんなで存分にたのしみました。なかには、「こんな美しい月を見たのは初めて」という方もいらして、高野のお山で見る月はまことにありがたいものでした。

30日当日は、あいにくの雨どころか脅威的な台風の襲来も予想されるなか、全国の各地から700人の参加者がめずらしいこの催しに駆けつけてくださいました。午後2時、倉岡弘叔教学部次長の司会のもと、「月の高野山」が開会。真言宗を代表される資延敏雄管長から、劈頭(へきとう)催しを祝ってくださるおことばを賜ったのはじつに光栄なことでした。わたしは「月に生かされて」を講演し、密教の専門家である著名な松長有慶大僧正からは講演「太陽の文化と月の文化と密教」をお聞かせいただきました。

夜の部は6時開会。この時には折りからの台風16号の風雨が次第に猛烈化するなか、月の高野山ならぬ嵐の高野山での催しとなりました。大伽藍広場の会場を屋内の大師教会に変え、「月に捧げる」金剛流御詠歌、宗教舞踊、華道高野山の華麗な演目の後、わたしのみじかい話、阿字観の実修、そしてウォン・ウィンツァンによるピアノコンサートとプログラムはつづいていきました。野口整体を学んでいるわたしですが、阿字観の呼吸法、イメージの使い方がとてもよく似ていることを学びました。野口整体は阿字観のような瞑想法、身体技法の歴史的伝統を踏まえて成立したのでしょう。ウォンさんのピアノは、外の嵐をただの自然に同化し、天と地を結ぶ聖なる場である高野の地を聖なる音色で満たし、わたしたちの魂に触れました。見事なものでした。

志賀勝 松長大僧正 ウィンツァンさん
「月の高野山」での左から志賀、松長有慶大僧正、
ウォン・ウィンツァンさん(写真撮影・柳瀬桐人)

万灯が揺れました。ゆらゆら。ときに激しく。なんとも幻想的な光景でした。わたしたちは夢を見ていたのでしょうか。風速40mもあったという強風が屋根をみしみしうならせました。

催しが終了し、わたしは会場出口で参加者を見送りました。暴風が吹き荒れる渡り廊下を参加者が続々と出てきます。目を見張りました。皆さんの顔色のなんと晴れ晴れしたことか。生き生きした表情とかがやいた眼。わたしは不思議で不思議でたまりませんでした。嵐の只中で、「月の高野山」だというのに、月の不在を残念がる人はだれひとりいません。かえって、嵐のなかだからこそ味わえた「心の月」に深く満足されている様子でした。たぶんわたしたちは、仏教文化が育んできた「心の月」に触れるよう促されたのでしょう。閉じ込められたような大師教会のすばらしい空間で、絶妙な心の月の一体感が生まれました。地表を襲う嵐の向こうには十五夜満月がたしかに天空を巡りはじめていました。例外中の例外のようにあまりに極端だったその夜、わたしは宗教的意識の根底に横たわる「両極端の一致」を思っていました。

「月の高野山」を、その特別な時間、特別な空間を奇跡のように享有した不思議さを、参加者のだれもが語りついでいってくださることでしょう。

とはいえ、台風のために高野山行きを断念された参加予定者の方々、まことに残念でした。九州からの参加予定者は、航空機が止まって参加不可能となりました。またの機会を期したいものです。

真言宗総本山金剛峰寺の関係する方々に感謝申し上げます。皆様のご尽力で歩まれた「月の文化」の大いなる一歩がさらに発展していくよう、心して努めていくつもりです。

岩坪眞弘教学部長をはじめ、主管くださった高野山真言宗教学部のご尽力には頭が下がりました。倉岡次長、柏田良辯教学課長、木下友真さん、それに大勢のスタッフの方々、ありがとうございました。困難な天候条件のなかで、最後まで催しを完遂できたのは皆様のおかげです。まこと、天の配剤でした。

<月>の会・大阪の皆さん、ありがとうございました。夜の部の司会をなさった松尾光明常福寺ご住職、軽妙な司会ぶりは参会者の心に残りました。

そして<月>の会ヴォランティアスタッフの皆さん、本当にご苦労様でした。

今回は、「月の高野山」についての報告・第一報です。次回更新では、参加者の声を中心に充実した報告をお届けするつもりです。どうぞご期待ください。

四日市の「voice of the Moon」

月暦の七夕(西暦で8月22日)、四日市市のプラネタリウムを会場に月の催しが開かれました。題して「voice of the Moon」。

七夕については西暦の7月7日ではあまりに不自然なことから、月暦の正しい日付けで行なった方がいいのでは、と全国的に関心が高まっています。今年四日市市で七夕の日に催しが実現したことは、このような気運のなかで大きな意義をもつものです。

主催は四日市市立博物館。催しは、博物館側のプラネタリウムを使った星空解説からはじまりました。その後ミュージシャングループ「NOVA」とわたしとで音楽と月の話のコラボレーション。NOVAは「Voice of the Moon」、「月物語」、「COSMOS」、「earth in a tear」などの曲を披露してくれました。

コーヒー店・minamo Cafe´を経営する小林剛さんが仕切ってすべての段取りを整え、若いスタッフたちとともに数ヶ月間綿密な準備をついやし、立派な催しに結実させました。160席弱のチケットは完売、プラネタリウムのお仕事と市民の文化事業がドッキングしたユニークな一夜となりました。

「voice of the Moon」にて講演
スタッフ記念撮影
四日市での催しのスタッフたち 前列左から二人目が小林さん

和田勝彦館長をはじめ四日市博物館の皆様に感謝いたします。とくに天文係の浅井晃指導主事には一方ならぬお世話をおかけしました。プラネタリウムという公共施設でこのような催しが実現したことは、わたしたちにとってはなによりのチャンスでしたが、博物館にとってもこれからの運営のヒントになり、月や星や夜空を取り戻す市民の文化事業の機会を作ってくださればと願った次第でした。

この催しがステップとなって、<月>の会・三重が結成されることになったのはうれしいニュースです。他地域の<月>の会とは世代が違い、NOVAをはじめ20代の若い方たちが三重の会には集まっています。かれらの若い感性が今後どのような表現を求めていくか、これからが楽しみ。仲秋の名月前の26日(日)に第一回例会を予定しているとのこと。取りまとめ役の小林さんのレポートをご覧ください。

催しには、二見町にある有名な歴史的建造物・賓日館の運営をなさっている方や、伊勢の五十鈴塾の関係者が遠くから駆けつけてくださいました。催しの翌23日、わたしは五十鈴塾に伺って懇談、月や季節について問題意識を同じくしていることに共感しました。これらの方々とは、来年にかけてともに月の催しを企画していくことになるでしょう。23日にはまた、<月>の会・名古屋に向けた二回目の話し合いをもちました。三重と愛知という隣り合ったニ県で、あたらしい月の文化が生まれるきっかけになれば、と心から願います。

minamo Cafe´店主・小林さんのレポート
志賀さんへ

さっそくコメントです。

志賀さんと初めて会ったのは、2003年6月。
まさか1年ぐらいのお付き合いで、月暦七夕のイベントを
一緒に行えるとは思っていませんでした。

minamo cafeでは、NOVAというバンドが
アコースティックライブを行っていて、その中で
「月」にまつわる歌を何曲か歌っている。
定期的に行っていたので、第5章は、minamo cafeを
飛び出して、違う場所でライブをしようということに。

構想半年、プラネタリウムで志賀さんを招き、
歌と講演のコラボレーションを企画した。
2004年8月22日、月暦の七夕。当日はあいにくの天気。
しかし、チケットは完売。何度も打ち合わせをし、
お客様には、絶対に喜んで帰っていただこうと頑張ってきた。

イベントは、志賀さんのお話、NOVAの歌、そして
満天の星空や幻想的な月。すばらしい空間となった。
演出という仕事に携わりましたが、スタッフみんなの力で、
一つのイベントを成功させてたと思います。

イベント中、「月の会・三重」のメンバーも募集しました。
2004年9月1日現在、メンバーは10名。
下旬には、第1回目の「集い」を企画しています。
地域交流、文化交流、「月」の好きな人たちが
楽しい時間を過ごせたらいいなと、いろんな活動を
していきたいと考えています。

長崎、大阪、そして、東京の皆様にもいろいろ
お世話になっています。この環が全国的な動きになれば、
すばらしい「月の会」になると思っています。

最近の執筆活動について

「望星」(東海大学出版会)10月号で「月のリズムと暮らす」を特集、わたしも参加して「月と暦と日本人の多彩な暮らし」を書いています。

UCカードが発行する「てんとう虫」9月号で「月を想う」を特集。市販されていませんが、入手法お問い合わせはアダック(電話03−3262−6972)まで。

「日本経済新聞」にエッセイストの海老名香葉子さんが「おかみさんカレンダー」を連載していますが、9月4日付では仲秋の名月について書かれています。このエッセイに付して日経の編集部が「月と季節の暦」に関する情報を入れてくれました。4日は土曜だというのに、10人もの方々からご注文などの連絡を頂戴しました。ありがとうございます。


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