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月と季節の暦
志賀勝から一言
(2007年6月10日)

大成功だった「列島巡礼」青森の旅

〈月〉の会・東京の新しい試みとして、十和田湖上の月見と弘前市での農家らとの交流の旅を企画し、行ってきました。月暦卯月の満月(6月1日金曜日)と翌2日土曜の日程、18人が参加。このような旅がどうして可能になったのか、まこと世にも珍しい旅となりました。

新緑織りなす奥入瀬渓谷や十和田湖上での黄金の月の出観賞、そして残雪も美しい八甲田山系の観光など、五感や肌が覚えた感動の一つ一つはとても言葉で表現しきれるものではありません。これもひとえに、〈月〉の会会員経営になる旅館の尽力あってのことでした。

弘前でも、郷土料理を復活させた料亭でもてなしを受けながら、地元の農家の方々など八名との交流。心打たれる話の数々でした。

二日間の印象記を、同行してくれたケーナ奏者の八木倫明さんにお願いしましました。私たちの旅を、簡にして要を得てレポートしてくれています。どうぞご覧ください(八木さんには会員自己紹介もお願いしました)。旅館の桂月亭からのメールも併せて掲載します。旅館のホームページにもどうぞアクセスを。次回更新のHPには、参加した方々の印象記を編集してお届けするつもりです。

(各写真はクリックすると拡大します)
 
八戸からマイクロバスで十和田へ。ブナの新緑が真っ盛り。蔦沼の近くには「月沼」がありました(右の写真)
  
名高い奥入瀬へ。平日ということもあって、日本一の渓流をほとんど独占状態。みんな大満足の散策となりました
  
十和田湖畔の「休屋桂月亭」に到着。「乙女の像」や十和田神社も近く、露天風呂も楽しめる最高の宿でした
  
参加者が分乗した「開運丸」ともう一隻が、湖上でドッキング。舟の間をワインが行き交い、お月見気分は最高潮に
 
出ました満月。木星の姿も。八木倫明さんのケーナの笛の音が、澄み切った十和田の湖面をかけぬけてゆきました
  
翌日は弘前「野の庵」へ。心づくしの昼食会は「奇跡の林檎」で有名な木村秋則さん(左下の写真)ら地元の農家を交えての交流会に。山本由美子さん(上写真の女性)のコーディネートの賜物です
 

私は全国の地名をよく知っている部類の人間でしょう。というのも、「月と季節の暦」を毎日のように全国の方々に送ることが仕事だからです。井の中の蛙に過ぎなかった私が、日本列島の地図を少しずつ描いていく、そんな「旅」をこの11年間してきたものです。地名を刻印しつつ、津々浦々の住んでいる方々から、その土地土地のこと、人びとのことを教えていただくという多大な恩恵に浴してきた年月でした。恩義計り知れません。

与えられた財を無駄にしないで、社会的に有意義な活動にいつかつなげていきたいという方向が私の願いでした、与えられたもののお返しをしたいという鶴の恩返し(笑)……。

〈月〉の会に集う方々に対しては、新しいツーリズム(観光の流儀)、すなわち土地が持つや自然や観光的な素晴らしさを、歴史や伝統と民俗をバックに今を生きる土地の人びとに教えていただきながら共に味わう新しいツーリズムの提起ですし、土地の人びとに対しては、土地の力(地力)を再確認し、文化や経済の展望に役立ててもらいたいということです。私にはもう一つ重要な課題があります。暦を使っておられる方が各地にいることから、これらの方々がつながるコーディネイト役を果たし、地域がさらに生き生きとなるよう働きかけをすることです。

こうした目的が今回の旅で果たすことができ、ヴォランティア冥利に尽きます。実は私自身にとっても、「隠れていたもの」に明かりが灯る想定外の出来事がありました。

遠く青森でも「月のめぐり合わせ」が

東津軽郡の佐藤貞樹さんという方は、名前だけはよく知った方でした。暦のご縁の方。その奥様が弘前での交流の会に参加されました。交流会をアレンジしてくれたのは、同郡の山本さん。その山本さんのお知り合いで、暦を使っている方が交流会に参加する、とだけは事前に聞いていました。

佐藤陽子さん(最右)
立ち姿が佐藤(野澤)陽子さん
(弘前「野の庵」にて)
その方が佐藤さんの奥様だったわけですが、話を伺い、私は胸が高鳴りました。佐藤貞樹さんは津軽三味線の高橋竹山のプロデュースをしていた方で、5年前に亡くなられたとのこと。月が好きで、月を追いながらお酒を楽しむような方だったそうです。このお話だけでも、私には別な世界が突如開く思いがし、暦がつないだ縁の不思議さに打たれましたが、ご主人亡き後の奥様の活動を伺うことで、さらに有縁の思いを深めたのでした。

奥様ご自身が佐藤貞樹さんの仕事をリレーしている方でした。野澤陽子の著者名で『竹女 ぼさま三味線をひく』(津軽書房刊、2006年、1785円)をまとめられたのです。早速その本を読んでいます。市川竹女、そして社会の底辺で生きた「ぼさま」の群像が温かく描かれた本で、胸を熱くしています。竹女は長く浅草に住んだとのこと、私の地元でもありますから、有縁をさらに尋ねる課題が私に課せられました。

旅行後のことになりますが、このような旅を「シリーズ列島巡礼―人こそ命 土地こそ宝」と名付けたら、と思いつきました。ちょっとかっこ良すぎるかな。しかし私のストレートな思いはこの通りなのです。次回の旅は、秋田県北部、〈月〉の会会員が関わっているユニークな「森のテラス」訪問を中心とする旅を考えています。現地は「マタギの里」でもあるとのこと。

暦愛用者からの短信

暦をお使いの楜澤丈二さんから歌集『危草』(ながらみ書房、5月刊、1905円)を送っていただきました。身辺から立ち上がる諧謔に味がある歌の数々です。中から二首――「八朔は葉月朔のことと知る西八朔町にゆかりの出来て」、「新よりも旧の利便の勝れるは仮名表記法と月カレンダー」。

会員の前田さんがHPを開設しました。こちらをどうぞご覧ください。(了)


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