このおばあさんのような方には、「月と季節の暦」は幼い自分と再会する懐かしさがありましょう。年取った方には、今とは違った時が流れた時代を懐かしむだけでなく、素晴らしい思い出をたくさん残した暦の時間によって営まれていた昔の行事や催事を現代に蘇らせるために、語り部となって大いに老人力を発揮していただきたいものだと思います。
昔のそのようなリズムを実際の生活や行事に生かそうと〈月〉の会も取り組みはじめましたが、このような方向は私たちだけでなく多くの人びとの関心の的であることが段々に分かってきました。
昨年5月6日更新のHPに、五節供などを旧に戻そうと試みはじめた「おおぞら保育園」の紹介を入れましたが、最近岩手県奥州市立の若柳幼稚園からも重要な情報が入りました。この幼稚園では、2月18日の月暦正月祝いをはじめ、五節供の祝いも月暦で計画とのこと。これだけでも元気づけられる話ですが、さらにユニークな計画もうかがい、ビックリしました。それは、園児たちの月暦誕生日のお祝いを行事に取り入れるというもの。園児たちに「あなたの“月”証明証」を発行して、月暦誕生日に親しんでもらう計画だそうで、これからの動きが実に注目されます。
「月を楽しむ 月と親しむ」という標語がこの幼稚園でも生かされるようです。この標語は多くの方々になじんでいただけるものとなってきましたが、このHPをご覧の方々も是非どうぞ身近な所「月を楽しむ 月と親しむ」計画をお立てください。
2007年版月暦への感想も続々と
新しい暦には、歌人の伊藤一彦さんが寄稿してくださっています。伊藤さんは歌集『新月の蜜』(雁書館刊)に見られるように月の相を見事に歌い込む月の歌人ですが、同書のあとがきには太陰太陽暦を使っていると記され、そして「自然と深く関わってきた日本人の伝統のリズム」がこの暦であり、「私のような地方の田舎暮しの者にはそのリズムが今でも大切である」と書かれています。
暦への寄稿を依頼したときにはこの太陰太陽暦が私の「月と季節の暦」のことだとはついぞ思っていなかったのですが、電話でのやり取りの過程で私の暦に他ならないと判明したときは驚きでした。伊藤さんは宮崎で歌を教えていらっしゃいますが、教え子の方から毎年月暦を入手なさっていて、私の本『月的生活』も贈ってもらったとのことでした。
その教え子の方は長年たくさんの暦を需めてくださっていて、11年になる暦の存立を支えてくださっている恩人のお一人。忘れえぬお名前のその方からお便りが届きました――