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月と季節の暦
志賀勝から一言
(2007年1月14日)

西暦2007年1月1日の月
西暦新年の月。佐久市の依田豊さん撮影。依田さんは時々
いい月の写真を送ってくださいまして感謝です。

西暦新年は十二夜の月がきれいに輝いて明けました。前年には二日月の日だったように、西暦の1月1日は毎年どんな月が出るか分かりませんが、月暦新年は必ず新月です。その日は2月18日で、今はまだ師走にもなっていないのがわたしたちの月暦のリズムです。

異常な暖冬がこれほど続くと、やがて来る新春の有難みも削がれてしまうと気遣われる近頃の気候ですが、皆様の地域ではいかがでしょうか?

全国に広がる、月暦への関心

最近、次のようなメールをいただきました。

母が働いていたので、私は現在94歳になる祖母に育てられました。子供のころ、お盆や七夕のとき、ばあちゃんの子供の頃はどうだったの? とよく聞きました。祖母は、昔は旧暦だったから、今と全然違う。新暦になって、なにもかもわからなくなった、といってました。旧暦では、今はまだ11月、本当に霜月。お正月は春のはじまりで、待ち遠しかったのがよくわかります。

このおばあさんのような方には、「月と季節の暦」は幼い自分と再会する懐かしさがありましょう。年取った方には、今とは違った時が流れた時代を懐かしむだけでなく、素晴らしい思い出をたくさん残した暦の時間によって営まれていた昔の行事や催事を現代に蘇らせるために、語り部となって大いに老人力を発揮していただきたいものだと思います。

昔のそのようなリズムを実際の生活や行事に生かそうと〈月〉の会も取り組みはじめましたが、このような方向は私たちだけでなく多くの人びとの関心の的であることが段々に分かってきました。

昨年5月6日更新のHPに、五節供などを旧に戻そうと試みはじめた「おおぞら保育園」の紹介を入れましたが、最近岩手県奥州市立の若柳幼稚園からも重要な情報が入りました。この幼稚園では、2月18日の月暦正月祝いをはじめ、五節供の祝いも月暦で計画とのこと。これだけでも元気づけられる話ですが、さらにユニークな計画もうかがい、ビックリしました。それは、園児たちの月暦誕生日のお祝いを行事に取り入れるというもの。園児たちに「あなたの“月”証明証」を発行して、月暦誕生日に親しんでもらう計画だそうで、これからの動きが実に注目されます。

「月を楽しむ 月と親しむ」という標語がこの幼稚園でも生かされるようです。この標語は多くの方々になじんでいただけるものとなってきましたが、このHPをご覧の方々も是非どうぞ身近な所「月を楽しむ 月と親しむ」計画をお立てください。

2007年版月暦への感想も続々と

2007年版月暦

新しい暦には、歌人の伊藤一彦さんが寄稿してくださっています。伊藤さんは歌集『新月の蜜』(雁書館刊)に見られるように月の相を見事に歌い込む月の歌人ですが、同書のあとがきには太陰太陽暦を使っていると記され、そして「自然と深く関わってきた日本人の伝統のリズム」がこの暦であり、「私のような地方の田舎暮しの者にはそのリズムが今でも大切である」と書かれています。

暦への寄稿を依頼したときにはこの太陰太陽暦が私の「月と季節の暦」のことだとはついぞ思っていなかったのですが、電話でのやり取りの過程で私の暦に他ならないと判明したときは驚きでした。伊藤さんは宮崎で歌を教えていらっしゃいますが、教え子の方から毎年月暦を入手なさっていて、私の本『月的生活』も贈ってもらったとのことでした。

その教え子の方は長年たくさんの暦を需めてくださっていて、11年になる暦の存立を支えてくださっている恩人のお一人。忘れえぬお名前のその方からお便りが届きました――

……カルチャー教室「短歌の心」の講座を十年近く受講しておりまして、一年一度の感謝をこめまして「月の暦」をお届けして参りました。本年、馬場あき子先生のエッセイを拝見しながら、「月」に寄せる短歌をたくさん詠んでおいでの伊藤先生にも、何かの機会が到来しないものかとひそかに思っていたところでしたので、およろこび申し上げております。……毎年、新鮮な話題満載の月の暦。来年の絵特集「浮世絵の月と季節』、エッセイ特集『月の道』を早速拝見しました。いずれも名だたる方々の文章ばかりです。少々硬くなりはじめ、かつ、亀裂もはじまった七十六歳の婆に、今まで以上の感動が緩やかに広がりはじめました。昔、祖母の時代の旧暦の行事など思い起こしております。……

月には、「隠れているものを明るみに出す」本性があるとは、かねてから抱いている感慨ですが、こうして今回の暦の仕事も私にとってかけがえのない出会いを、白日ならぬ白月の下に明るみにしてくれています。

毎月の二日月を家族揃って見るために暦を利用している方。シカが増えて自然破壊が進む尾瀬の自然保護に携わっている方からは、月夜にシカは出てこないということをはじめて体験したとの情報(マタギの報告などで山の民にはよく知られている事実でしょう。クマやイノシシの出没についても参考になることと思います)……。今回の暦販売でも、さまざまな情報に接しましたが、いつも長めになる傾向のHPなので、これにて紹介は終わります。

最後に重要なお話を

都会に住むものにも「月がなかったら人生は闇」ぐらいに思う人は多く、東京の〈月〉の会会員の数も多いのですが、伊藤一彦さんが述べた「田舎暮し」、あるいはそれに近い世界で、〈月〉の会は今後大きな役割を果たしていくことになるかもしれません。埼玉県深谷市で〈月〉の会・深谷が誕生します。結成の催しのチラシをご覧ください。

11月に講演・交流のため訪れた壱岐でも〈月〉の会が作られたとのことです。詳報を追ってお伝えするのが楽しみです(了)。


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