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月と季節の暦
志賀勝から一言
(2011年10月8日)

「月と季節の暦」まもなく発売します

2012年版の月暦(旧暦)「月と季節の暦」と「月暦手帳」についてお知らせします。2011年に発生した大変な状況を踏まえての制作となり難航しましたが、10月末には出来上がってくる手筈になりました。

2012版の暦、手帳制作は、震災・津波と原発事故後の緊張のもとで取り組むことになりました。これまで16年間、月の暦は日本の各地域に文化的な活性化を促すだろう、という展望にもとづいて発行を継続してきました。東北各県と関東北部を襲った災害はこのような展望に大きなダメージをもたらすものです。

新しい月暦の制作に当たっては、〈東北〉が困難の中から立ち上がる未来を願って特別な編集に努めました。東北の歴史がいかに自立的な道を歩んできたのかに焦点を当てた「月は東に――創造の東北誌から」、月光が仕事や生活に役立つことを示す「浮世絵に見る 月夜に仕事!」、再生を願う思いには常に月が導きであったことを示す寸言集「今月の〈再生の月〉」の三特集を収録しています。以下に、長めですが、特集の意義についてまとめてみました。ご覧いただければ幸いです。

特集1.月は東に――創造の東北誌から

日本列島の東側で花開いた縄文時代以来、東北は独創的な歴史を歩んできました。近世以降、東北は自立的な発展の多くの可能性を絶たれ、中央政権の下でさまざまな困難を負わされてきたように思います。創造的で自立的な東北誌を回顧することは、今日日本人にとって欠くことができない課題と考えました。

幸いなことに東北の各地では地域の自立を唱える思潮が勃興していて、さまざまな雑誌が刊行され、元気な人びとの活動がありました。こうした機運が、まさに水に差されたわけですが、一年また一年と東北の人びとの思いが日の目を見るようにと願い、暦としては異例ではありますが一年の暦を通し縄文以来の東北誌から十二項のテーマを選んで掲載してみました。2012年の時間が東北となにがしかの接点を持ちつつ歩まれることを期待しつつ。

特集2.浮世絵に見る 月夜に仕事!

人工光に安住してきた私たち。災害後の電力不足により、「節電」が叫ばれた夏でした。しかしこの言葉にはずっと違和感がありました。人口光への絶対的帰依の精神をそのままにして我慢や辛坊を強い、結果的に人口光への依存をさらに助長するスローガン、とでも言ったらいいでしょうか。月の光を考えることはこれとは逆の積極的な方向で、これまでも夜と月の再考が月暦の役割と思い、アピールしてきたものでした。災害後のエネルギーの問題を考えるために、月明かりの効用を絵特集として編んでみました。

以前暦の写真特集に登場願った桝野正博さん(石川県金沢市在住)から、半月の光でも白山登山は十分にできる、と聞いたことがありました。宮城県の農家の方からは、やはり半月の光があれば夜間の農作業は可能、と聞いていたのも忘れられない言葉です。月の光にもちろんお金はかかりませんが、人間的な環境を考えてみればそのような小さな問題ではありません。精神的な安定(副交感神経の活性化)や目の役割の復活、さらには沈思の思索まで可能にさせる魔力が月光にはあるのです。

昭和の前期ごろまではあっただろう、闇の存在と月明かりのありがたさ。ヴィジュアルにそのことを提示できるものはないか、という問題意識で取り組みはじめましたが、なかなか大変な作業でした。結果的には、月明かりの下で仕事にいそしむ光景のあるものを浮世絵を集めることができましたが、風俗画である浮世絵ですからどれだけ実際を反映しているかは分かりません。絵を眺めながら、ライフスタイルを考える上でのヒントになってくれればと願う企画です。

特集3.今月の〈再生の月〉

よみがえり、再生を求める願いや思潮の中心には、いつも月の存在がありました。死滅しては三日月となってよみがえる月の姿に、古来人びとが抱いた復活再生への希求を今こそ思い起こすべきでしょう。月への注目を喚起することは、人や地域や地球の再生に関わること、と信じてきましたが、2011年の現実は特にこの点での〈月〉に焦点を当てることが課題と思われました。古今東西、〈再生の月〉に関してさまざまな寸言が綴られてきました。それらの寸言を毎月掲げましたが、私たちの再生への願い、行動への導きの手がかりを汲み取っていただければと願う企画です。

以上が主要な特集ですが、このほかにも新しい暦では来年の金環日蝕など天体ショーをまとめて紹介した特別欄や、好評の「二十四節気と農業」、「惑星出没時刻表」を収録し、暦としては多過ぎると言えるような内容豊富な構成です。

「二十四節気と農業」は昨年に引き続いての掲載ですが、東北特集を考える中で大変勉強になった雑誌「季刊東北学」に連載されている高光敏「済州島の民俗」が季節の推移と農業のあり方を考える上で大変有益です。ということで、二回目となる今回の「二十四節気と農業」はこの韓国・済州島における事例を借用し、二十四節気をどう使いこなしていったらよいのか考える参考にしていただければ、と編集してみました。「月の農業」への展望はこのような二十四節気の十分な理解の上で考えられていくことでしょう。

「月と季節の暦」、「月暦手帳」はライフスタイルや社会のあり方に再考を促す提案のメディアです。皆様の支持が広がることを心から願っています。

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