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月と季節の暦
志賀勝から一言
(2013年9月29日 月暦八月二十五日)

いよいよ琉球弧の特集!

2014年版「月と季節の暦」「月暦手帳」の制作が終わり、今は印刷段階です。11月1日の発売を待つばかりになっています。


2014年版「月暦」表紙

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今回の特集は琉球弧。奄美、沖縄、宮古、八重山からなる三日月様(よう)の弧状の島々を総称して琉球弧といいますが、行政的には沖縄県と鹿児島県に属すとしても、歴史的経緯、日本との係わり合いでは一体として捉えることができる島々です。同時にまた、各地域の地域性もそれぞれユニークで、琉球弧は四地域からなって全体を形成しています。

特集タイトルは「琉球弧三日月列島──奄美、沖縄、宮古、八重山── 月をめぐる歌謡・祭祀 神話・歴史」。編集面の全体を使って琉球弧に関係するもので編集しました。

まず歌謡。現代も歌い継がれているものから、『おもろさうし』中のものや歴史的なものまで取り上げました。琉球学の祖・伊波普猷(いはふゆう 1876〜1947年)は、「八重山は実に歌の国、舞の島」と述べたことがありますが、八重山地域に限らず琉球弧全体にも多かれ少なかれそれは言えることです。月が身近にあるからでしょう、月を称え、月によって感性を揺り動かされた歌謡もたくさん記録されていて、それらから十二か月分選抜し、特集の一つの柱としました。

月暦が列島で生きていた時代江戸時代まで、朔日(ついたち)と十五日(十五夜)は、祭日、祭事の日取りとして庶民から権力者までが尊んだものでしたが、琉球弧では現在でもなおそれが生きられており、竃神(火の神)に祈りをささげる節目になっているのが注目されます。

日常的なこのような月暦に基づく習慣に加え、年間の祭事もまた西暦化をほとんど免れています。たとえば、「お盆」は日本では西暦7月15日と西暦8月15日を中心とする行事に西暦化していて、月暦の七月十五日を守る地域は消滅してしまいました。しかし琉球弧ではその日取りが生きているのです。特集ではこのような実態を教えてくれる祭事、催事を取り上げました。暦の誌面では十分表わすことはできませんでしたが、琉球弧では各島々で個性豊かな行事を多彩に展開している、それは私たちの将来にとって大きな励みになるものです(日本列島──特に本州部分──もやはり大きな三日月状なのです)。

月を抜きにしては語ることができない琉球弧の歴史や遺跡も取り上げました。神話、説話についても特別に解説しましたが、特に月と食料、月と水については、断片的であいまいさに包まれている日本の古代神話と違い明確に語られていて、日本神話のもともとの形は琉球弧で語り継がれているものと同じものだったろうと確信することができました。琉球は日本列島の源郷だ、と語る人がいますが、なるほど琉球弧と日本列島は、違いは大きいものの、神話や信仰において共通するものが確かにあるのです。

以上のような内容の特集を写真と共に構成し、今は印刷の上がりを待つばかりになっています。思えば、1997年に月暦の制作を始めて2014年版で18年、月や月暦が実際に生かされている範例として琉球弧がいつも念頭から離れませんでした。制作を始めたきっかけも、琉球弧の存在があったからといって過言でないかもしれません。いつかはお礼をしなければならない地域と考えてきましたが、ようやく実現できてほっとしています。

表紙背景は聖なる久高島

今年のお盆の月暦七月十五日は西暦8月21日。このときを期して最後の沖縄取材を計画していました。お盆の取材もありましたが、十五夜の月が沖縄から見て久高島に昇る写真を撮り、それを表紙にする目的がありました。

久高島は、よく知られているように、沖縄人がこの島を通して形成されたという信仰を有する神の島。神事「イザイホー」については多くの人に知られているのではないでしょうか。大文字で記される太陽信仰(ティダ信仰)に邪魔されて月のことはあまり言及されることはありませんが、久高島の存在を考えるとき月を語ることは不可欠であり、そして実際、お盆の月、それから一ヵ月後の中秋名月の月は、有名な斎場御嶽(セーファうたき)から見て真東に当たる久高島の真ん中に上がり、島を照らして渡っていくのです。神事を語るときには夜について思いを凝らさねばならず、夜を語るには月に思いを凝らさなければなりません。神秘的で静謐な、月が照らす久高島を見たら、ティダ信仰とは本当なのだろうかと疑いが芽生えるかもしれません。暦の表紙を飾った写真を是非見ていただきたいものです。

琉球弧特集の一つとして、琉球弧に生息する固有生物の紹介も入れました。さらに、来年の月暦の注目点として「朔旦冬至」の発生を特筆しなければなりませんが、画期的なこの事象について閏九月(来年は閏月が入る一年十三ヶ月の暦になります)の編集面で解説しました。

暦、手帳の発売は11月1日。別項を見て、どうぞご注文くだされば幸いです(クリック)。

中秋名月


2013年、中秋名月

右に満月、左にスカイツリー
〈月〉の会・東京オフィスから)

中秋名月をはさんで、美しい月夜が連夜続きました。皆さまも堪能したことと思います。中秋の9月19日、オフィスで観月会を開きましたが(写真)、〈月〉の会・深谷からも参加がありました。深谷の会では、来年3月16日にウォン・ウィンツァンさんのピアノコンサートを予定していて、ブログ上で情報が伝えられていくと思います(そういえば今月=八月の月暦はちょうどウォンさんのエッセイ「月に帰る日」が掲載されているページです)。まずは観月会の印象記ですが、アドレスは以下の通り。是非ご覧下さい。

http://blog.livedoor.jp/fukayanotuki/archives/2013-09-22.html


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